人の顔は、何タイプあるでしょうか?

画像を処理して人間の顔識別・分類を行う技術は古くからあります。 そのようなタスクでは、ピクセル情報から、画像の物理的な特徴を抽出することよって識別を行います。

しかし、人間同士は互いをどのように識別しているのでしょうか。 「しょうゆ顔」「ソース顔」という言葉もありますよね。 ピクセル情報としては全然違う人たちを、”似ている”と捉えているかもしれません。 何かしらの(物理的な特徴から)類似性を無意識的に感じ取っているかもしれません。 それらを確かめるには、実際に人々の主観的なデータを集める必要があります。

実験してみました

(詳しくは、こちらから: http://img.voteclustering.org/)

というわけで、ニコニコ闘会議2017とニコニコ超会議2017に、人の顔で神経衰弱するゲーム、“顔顔衰弱”を出展しました。 ニコニコ闘会議ではクイズアプリ、ニコニコ超会議ではカードゲームとして実施。

用意した顔データは150人分。 画像集として販売されているモデルさんの写真1と、Pixivで掲載されているイラスト2を使用しました。

ルールは簡単。

  1. ディーラーが顔カードを数枚並べ、プレイヤーは手札の顔カードと最も似ていると思うカードを選択し、チップを賭ける。
  2. カードの裏には色がついており、ひっくり返して同じ色のペア(=”似ている”3)だったら勝ち(難易度に応じた倍率のチップがもらえる。外れるとチップ没収)4

KaoKao-procedure1 KaoKao-procedure2

結果

3分類

FacePartition

alluvial diagram

AlluvialDiagram_KaoKao

男女が区別されるのは当然ですが、中性という分類が自然に出てくるのは面白いところです。 しかも基本的に男性から分岐しています5。 5分類以上が、真に非自明なところですが、ウェブに載せられる顔画像に限りがある1のと、その分類が統計的に有意6か微妙なラインなため、触れないことにします。

もっと大規模な実験がしてみたいところです。

様子

niconico-toukaigi-2017 niconico-choukaigi-2017

実施・解析手法

  • Data collection:神経衰弱カードゲーム “顔顔衰弱” (ShikiSci_Cyan)
  • Framework:Stochastic blockmodelによるベイズ推論
  • Algorithm: EM algorithm + Belief Propagation + Cross-validation (graphBIX)

その他

  • このプロジェクトは、産業技術総合研究所 NEDOプロジェクトの人間工学実験として実施されました。
  • 本実験は、産業技術総合研究所 確率モデリングチームの近藤那央さん、大前智嵩くんと共に実施しました。

  1. モデルさんの写真は、利用規約の関係上、ここには載せられません。  2

  2. Pixivのイラストは、すべて著作者からの承認を得て使用・掲載しています。 

  3. ある時点までで収集された全データを使って、すべての顔を分類。同じグループに属しているペアは、みんなが”似ている”と思っていると解釈します。 

  4. 実際は、複数人でプレイ。順番で誰か一人がペアを選択し、周りで見ている人には、選ばれたペアが”似ている”と思うか思わないかを賭けてもらいます。 

  5. もちろん、用意したデータセットに偏りがあるから、という可能性は十分にあります。 

  6. 図中の点線が、いくつかの手法で選ばれる分類数を表しています。”spectral”はnon-backtracking行列の孤立固有値数から見積もった値(3分類)、”dc-SBM”と”SBM”は、それぞれ次数補正あり/なしのstochastic blockmodelの予測誤差の交差検定から選ばれる値(4分類と6分類)。